匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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……ここがシャワー室だ。用が済んだら向かいのダイニングへ来い、そこで……。
(あくまでも従順な首肯を示す相手の頬の硬さにまるで気が付かなかった訳でもないが、これまで魔法の鍛錬や研究に没頭し人付き合いを蔑ろにしてきた己に子供の緊張を解す術など知る由もなく。とりあえず汗を流し腹でも膨れればもう少し互いに話も出来るだろうと、背後へ続く控え目な随行の音に耳を傾けつつ退室し。そのまま直に自室より幾つか隣の目的地へと至れば、身を後方へ反転し中へ案内しようとした折。ひらり、と不意に仄かな蒼の光が視界を掠めて。――水精霊。魔力量の多い自分が長期間滞在した影響により、異常な成長と水分を蓄えた大樹に幾らか住み着くようになった彼らが、こうして姿を見せること自体はそう物珍しい事でもない、が。超自然的な存在たるそれが妙に背後の少年へ纏わりついているように見えるのは、よもや単に自我に乏しい者同士共感を得たという訳ではあるまい。そういえば昨夜のオークションの口上において魔力量に関する言及があったような気もするものの、何はともあれ時間短縮には都合良しと、ちらと相手へ一瞥をくれてから不穏な警告を放った後、使役魔法の行使と共にその背を押して扉の開閉を。無論繊細な配慮など到底望めぬ精霊相手では少しばかり手荒な洗浄が始まることだろうが、五分程度を経過する頃には足の爪先からその頭頂、更には纏う衣服類に至るまで綺麗さっぱり汚れという汚れはこそげ落ち乾燥すらも済ませているはずで。その間に自分はと言えば、依然二日酔いの症状による鈍痛の止まぬ頭部を抑えて踵を返し、全てが終わる頃には向かいのダイニングにて至極簡易な食事と共に相手を待っているだろう)
……ウンディーネか。丁度いい、"少し手伝ってくれ"。……言っておくが、昨夜済ませておかなかったお前が悪いからな。
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