匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(怒っているのか、呆れているのか、それとも無関心か。眉間に皺を刻んだ表情からは主人の感情も考えも読み取れず、身じろぎひとつしないまま次を待つばかりで。やがてオークション会場で最初に告げられたものと同じ命が下されれば、その時と同様にこくりと頷くも、警戒心を表すかのようにその唇は自然と引き結ばれており。想像力を働かせればこれから起こり得る様々を予測する事は容易いが、大人を、それも魔術師を前にそんなものが何の役にも立たぬ事を悟るのは更に容易で。否が応にも最悪の場面を映像化しようとする頭を電源を落とすように無理やり思考停止状態へと切り替え、ドアの前に立つ主人の元へと一歩を踏み出す。行手を阻む様に前方に落ちる陽光から何気なく紙鳥達の飛び立った窓の向こうをもう一度見遣れば、廊下へと出て行く足音に続いて寝室を後にし。昨夜数秒間だけ覗いた廊下は、単純に明るさの違いによるものか、それとも自身の心理状態によるものか、昨夜とは表情を変えて見え。これからどこへ向かうのか、自分をどうするつもりなのか。何一つ尋ねることが出来ぬ状況も昨日とまるっきり変わらず、待ち受ける何かを受容する覚悟だけを密かに抱え、前を行く主人の背を追うように歩いて)
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