匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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様? ――! っあ、……そうか、お前は俺の……いや、俺が奴隷なんて買うはず……。ち、ちょっと待て。
(希少な魔道具や魔法薬を狙うコソ泥か、はたまた近隣の小妖精共の性懲りもない悪戯か。特段異質な気配こそ感じないものの、鬱蒼と緑生い茂る山奥の自室へ凡庸な子供がおいそれと現れる道理はなく。またこの界隈において非力で幼げな見た目が中身に準じるとも限らない。何れにせよ、自身の領域へ無断で足を踏み入れた以上それなりの灸を据えてやろうと、心身の不調に基づく不快感をも諸共に杖を握る手へ力を込め。――と、温度のない声音に紡がれた己への不自然な敬称にぴくりと眉を顰めては、一抹の光すらも届かぬ昏い深海の底が二つ、此方へ向けられていて。妙に引っかかりを覚えるそれに動きを止めたのも束の間、忽ち昨夜の記憶の蓋が盛大に開かれれば雪崩込むような信じ難い記憶の数々に当惑を極め。爪先から寒気に似た何かが脳天まで駆け上がると同時に、ザァア、と全身の血の気が引く音がリアルに鼓膜へと届くようで。強気の姿勢から一転して狼狽を顕に突き付けた杖をだらりと地へ移し、愕然と見開かれた瞳が呆けたような間の後にハッと改めて相手を正面に捉えるや、必死の形相の下その細い両肩を容赦なく掴み。自分達が退出した後の商品の行方などよもや相手が知るべくもないが、色濃い焦燥により多弁となる口は理性よりも先に詰問を始めて)
お前、……お前お前お前ッ! ――千里の魔鏡は! 数百年前、とある著名の魔術師が手ずから創造したという森羅万象どころか使い手によっては過去や未来まで見通す古代魔道具! 魔物の巣食う遺跡から発掘され、昨夜のオークションで競売にかけられた筈の一品は何処に……!
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