匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(主人が手を翳せば、あれほどまでに自分を縛り、足を踏み出すことさえ躊躇わせていた足枷がいとも簡単に崩れ去り。粉々になったそれが風に乗って見えない場所まで流されてゆくのを何気なく目で追い掛けていれば、ふいに体が浮遊する感覚に襲われ。足枷から解放されたことによる感覚の変化かと一瞬錯覚するも、視点までも高く昇っていることに気が付けば眼下の街並みを見下ろす。船と馬車で遠路遥々この地まで運ばれてきた自身にとって、唯一の見知った建物であるオークション会場に目を向ければ、全ての落札が終了したのか丁度三々五々観客達が帰路に就くところで。主人の忠告が耳に届く頃には、誰の元へ行くことになろうと同じ等という思考は消え失せており、しがみつくように両手で掴んでいた杖を一層強く握り締めて。了承の意味で縦に振った首の動きを確認できる位置に主人がいないことに一拍遅れて気が付くも、口に出して返事を返すタイミングを完全に失ってしまえば断念し。視界の大半に声色から微かに上機嫌にも感じられる主人の背を映し、この浮遊感にかまけて命を聞き逃してしまわぬようにと耳を澄まして)
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