匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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ふん、……蔵書に込められた魔力や思念類はともかく、地下にはより厳重な封鎖を施しているから、何時もはこうも騒々しくはないんだが。先の暴発で空間に僅かな亀裂が入ったのを奇貨として、お前の魔力に惹かれた小物が雪崩のように……。
(初めて垣間見た魔術の世界の入口に、少年の特異な瞳が衝撃を宿して暫しの沈黙が落ちる。自身も覚えのある幼少時代のそれを自ずと想起しては静の空間を壊さぬまま折っていた膝を伸ばして立ち上がり、余りにも盛大な歓待振りへ金の瞳を滑らせて。無論、殆ど自由意思のない彼らが少年の身に起こった事象を感知したという訳では無く、ようやっと控えめな口唇から発された問い掛けへ当然と言うように吐息すると、先の強大な魔力の暴発により引き寄せられたに過ぎない旨を説明し。しかしながら、並べた言の葉とは裏腹にそこに何らかの意図や導きのようなものを見出してしまいたくなるのは相対した瞳の俗称に依拠するものとしても、この新たに門扉を開いたばかりの世界が相手を手放しで歓迎するだろう事は紛れもない事実ではあり。――良くも悪くも、清濁問わず。徐に顔の向きを対面へと戻し、視線を交錯させると以降到来するだろう現実を映すような厳粛な面差しで忠言を連ねていく。己の傍らに身を置く以上遍く危険を排除してやる事自体は可能だが、かような無菌室へ閉じていては如何な赤子とて何時までも自立し得まい。自身以上の苦難の待つ相手へ敢えて直截的な物言いで事実を突き付けていれば、丁度精霊の光に紛れ接近を試みたと見える黒曜の小さな歪みを不意に杖で叩き落とし、種族名すらまともに冠せられていない、幽冥の境を漂うような詰まらない悪意や思念の残留が打撃により外形を崩されジュクジュクと地へ跡形もなく醜く崩れる様を一瞥して捨てて。致命的な物からは自身が盾になるとしても、奇しくもこれから相手が遭遇するだろう辛苦の先鋒となったそれを端緒とし、眉間に皺を刻みつつ腕を組んで目前の瞳を改めて見遣り)
だが、此方が視えるという事は、向こうからも此方が捉えられるという事だ。特に、お前のように碌な自衛手段のない魔力持ちなんて格好の餌だからな。……――対処する術は教えてやる。が、お前を死ぬまで囲ってやるつもりはない以上、ある程度の〝実践〟は覚悟することだ。……これから苦労するぞ。
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