匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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……阿呆、こんな山奥の生活を気に入ってどうする。
(唇の片端を僅かに持ち上げ、皮肉めいた響きで相手の鼓膜を揺らした筈が、動作こそ最低限ながら確たる芯を内に宿すような明々の否定に瞠目し。何事か言いたげな口唇を一度だけ無為に開閉させた後、やがて種々の想念が胸中を巡った帰結として呆れを孕む金眼をじとりと対面へ差し向ければ、徐に歩み寄った際のすれ違い様に伸ばした手の平でぺちんと相手の額を軽くはたいて。さした膂力も籠っておらず僅かな衝撃だけを齎しただろうそれは、これまで忌避していた気安い戯れに他ならず、相手からの好感を察して無性に沸き上がった耐え難い照れ臭さからの裏返った愛情表現ではあるが、仏頂面で為されたそれが相手へ正確に伝達されるかは甚だ怪しい所で。そのまま歩を進めた先は他の部屋へと続く扉の前であり、一度振り返り端的な説明を放れば相手へ追随を促して。一旦修繕は後回しにする他ない床を転がる蒐集品達へ若干物悲しげな視線を残しつつも、相手と共に扉を潜ったのであれば、地上以上に部屋間の接続を完全に分断した構造である為に特段先の暴発による影響は見受けられない整然とした書庫が姿を現す筈で。そう巨大な空間でも無いが、一定間隔で並ぶ書棚にみっちりと敷き詰められた蔵書数は優に百を超えており、言語や様式、時代を問わず蒐集され壁面までをも埋め尽くすそれらは独特な威圧感を放ちつつ、主人に相似した仏頂顔で来訪者を出迎えるだろう)
兎にも角にも、まずはお前の魔力開花からだ。その魔力量で自然な目覚めに任せると、どんな規模の暴発を起こすか分かった物じゃないからな。……此処では集中も何もないだろ、書庫にでも移るぞ。
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