匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
![]() |
通報 |
……これは魔力測定用の魔道具だ。本来目覚めてもいない魔力という代物は、潜在能力や第六感と比類して正確な計測が著しく困難となる。が、それを高い精度で初めて可能にしたのがオーズ歴165年、魔道具の基礎理論を築いたかの高名なヴィリア魔術師の手掛けたこの一品で、ただでさえあの時代は大戦の影響により魔道具はおろか資料すら乏しい中原物が残っているのは極めて稀な――いや、まぁ、今はいいか。
(滅多と情動を顕にしない端然とした面貌が、子供らしくも得体の知れぬ未知への畏怖よりも好奇心に近い輝きを仄かに灯すのは今に始まった事ではない。臆病風どころか何やら気概に満ちる様子も含め、労を取り蒐集した品々を前にしてそう悪くない反応に、つい滑りの良くなった舌から熱を孕む自前の知識を滔々と垂れ流しかけ。日頃の生活指導から発展した教養やマナー講義ならばまだしも、界隈においてもマイナーな魔術知識を一般人へ披露する無益さに遅れてはたと気がつくと、態とらしい咳払いと共に本題となる測定器へ手を翳し。――途端、内なる幻想的な灯りは煌々とした赫炎へ彩りを変え、急激に加速する熱量が球体内の九割程度まで一挙に膨れ上がり。「内なる魔力がどのような形を取って顕現するかは最も適正の高い魔術系統に依拠するが、肝心の多寡については純粋な目測で行う。まぁ、鍛錬次第で多少の増減も可能だが、凡庸な魔術師で精々半量程度だな」そう解説する自身の語調が少々得意気に炎色に染まった室内へ響くのは、自らの才能と積み重ねた研鑽に相応の誇りを抱くが故。相手の魔力量に関しては多少の憂虞こそあれ多くて六分目程度であろうし、持て余すようなら少し発散用の魔法を教授してやるか、抑制薬の一つ二つで事足りるだろう。よもや誇示したばかりの鼻面を早々に叩き折られようとは露知らず、その場から数歩身を退き場を空ければ、元の彩りを取り戻したそれを相手へと勧めて。……ちなみに、現在市井に流通する安価な模造品とは異なり、余りにも精度の高いこの古代魔道具は元々自身の恩師より受け継いだ代物。仮に使用者が規格外の魔力を保持していた場合、最悪当人ごと街一つを吹き飛ばしかねないとかつてその危険性を恐々と聞いたものだが。この室内が薬品だけでなく魔術の実験や演習も兼ねた特殊な内部構造である事、また何よりも自身が隣に控えている事から万が一派手な暴発が起ころうと大きな惨事にまで繋がりはしないだろう)
……前にお前の身体を診た時、少し妙な気配を感じたからな。杞憂だとは思うが、一応測っておけ。
トピック検索 |