匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(書類を再び手中に戻した主人の対応は実に素っ気ないもので、紙面にちらりとだけ目を遣ると是とも非とも言わずにそれを受容し。尊重か無関心か、はたまた不請の表れか。警戒による邪推は減る一方で、ここ最近彼に正解を求める機会が増えたためか事務的な態度にも何かしらの反応を探してしまうが、眼前の面持ちからは心緒の片鱗すら拾うことは出来ず。自身の将来の選択であるにも関わらず当事者意識が芽生えることもなく、行雲流水と以降の段取りに頷いたなら、引き取り先についての一切は思いも馳せぬまま意識の外へ。信実な彼が〝そう条件の悪くない引き受け先〟と言うのだから危険は無いのだろうし、奴隷の身分から解放されるというだけでも欣喜して然るべきではあるものの、拭えぬ後ろ暗さが浮き立つ感情の錘となり、これまでの経験が明るい未来を泡沫の夢のように感じさせ。主人のような力があったならと夢想したことが一度くらいはあったかもしれないが、不毛な憧憬は己の首を絞めるばかり。存在を知るのみだった部屋への立ち入りを仄めかす指示に、悠然と腰を上げた相手を見上げて双眸を瞬かせては、指示に従い地面を掴もうかという形で左手を体の正面に出して)
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