狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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ははは。美味いか、それは良い事だ。お前が美味いと云えばここの料理は充実していくだろうよ。言は魂だ…大事におし。
(怒りを覚えたあとはやたらと腹が減るのは何故だろうかと考えたことがあった。別に大して力を使ったわけでもなければ、激昂したのだって片指数える程度、少量の怒りでさえ何故か普段は幾らだって我慢の効く空腹が言うことを効かなくなるのはきっと、精神的な面なのだろうと。あまりこの娘の前で怒るのは控えようと少しだけ肝に銘じたところで、美味しいという言葉に意識をそちらへと向けてひとつ人あたりの良さそうな笑みを浮かべてはうん、と頷き手前にあった里芋の煮物を器用に箸先でつまみ上げては口へと運んで。味の程度はやはり理解は出来ないが今の飢えを凌ぐのにはちょうどよく、箸置きにそれを戻しては相手の小さな頭をひとつふたつと撫でてやり。人の膝の上では食べにくいかと軽く抱えては胡座をかいた足の間に座らせてやり、先程と違い後頭部は拝めるが顔が見えないのは少しばかり残念さを覚えるものの小さな頭が食事をする度にほんの少し揺れるのは後ろから見ていてもとても愛いく思えてくるのだから、歳をとったものだと理解する。空いた皿や茶を持ってきている使用人に声を掛けて神酒を持ってきて貰えば、小さめの赤い盃に注いで飲み干していき。あっという間に空になってしまえば縁側に面した開け放たれた大きな雨戸の向こう、しんといつの間にか降り始めた雪に目元を細めては揺らりゆらりと尾を揺らして)
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