匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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──……エディが使ってたもの! ……では、ないですよね
なんでこんなところに……
( ギデオンの目配せに天井を見上げると、ビビもまたその異質な格子に目を見開く。咄嗟によぎったのは、先程聞いたばかりの一番新しい"座敷牢"の心当たり。しかし、その作り、手入れのされ方、木の格子の調子などから、すぐさまそれがもっと新しい時代のものだと気がつけば。寧ろその方が余計、エディ以降にもこんなものを利用する人間がいる証左として、良くない兆候だと気がつき顔を顰めると。相棒と二人、無言で顔を見合わせ、階段のような、梯子のような心もとないステップをゆっくりと上って。 )
…………、
( そうして視線と同じ高さになった空間に、人の気配がないことを確認すると、ほっとあからさまに安心を表情に反映させてしまったのは許されたいところ。とはいえ、空いた扉に積もった埃の調子を見るに、決して忘れ去られた遺物、という訳でも無さそうだが──そうして。ここでこの瞬間、その悍ましい光景を目の当たりにする瞬間までは。まだビビはこの村のことを救える、と。愚かにも信じ込んでいたのだった。
現代社会にそぐわない風習や価値観は、長く常世と隔絶されてしまったが故。数日後に差し迫った恐ろしい予感すらも、ウェンディゴに太刀打ちできない村民が、多数のために少ない犠牲を払おうとするのを、外部から来た自分がどうして非難することが出来るだろう。──現代社会と関わりを持ち、これからのフィオラはきっと変われる。その輝かしい未来の始まりに、彼らの目の前で彼らを悩ませた"悪霊"を、ただの魔物へと斬って堕としてやれば、彼らだって喜んでその悲しい風習を取りやめるはずだ、と。
光採りの窓より高い空間は、夕方ともなると人間の視力では太刀打ちできない。仕方なく、腰に吊るした魔導ランプに黒幕を下ろし、手元がほんのりと見える程度に灯すと、古い燭台に溶け残った白い跡が目に映る。他の魔物から作る蝋燭と比べ、明るく無臭で長く使え、蜜蝋より安価な──鯨蝋。魔導ランプと並んでトランフォードの夜を照らす白塊は、二人にとってはこれ以上なく見慣れたそれだが、よその地域との取引が潰えて久しいフィオラにあるわけが無いもの。それ以外にも、5024年のキングストン新聞に、平地にしか分布しないカトブレパスの皮革の財布──そして、それらにも誤魔化しようもない、木製の床に広がったどす黒く夥しい"何か"の染み。一体ここで何があったというのか──本当は、悪い人たちじゃないのだと。何故根拠もなくそんな風に信じ込めたのか。己の甘さを思い知り、ショックの隠しきれない表情でギデオンを振り返ると、ふらふらと青い顔で数歩後ずさって。 )
あっ、あっ……ギデオンさん、これ……
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