匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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──……この村を襲う"エディ・フィールド"の正体も、ですね!
( 相手の信頼に力強く頷いたビビの一方で、他でもない相棒はしかし、その正体には大体の目星が着いている、というのだ。「僕はもう少し調査を続けます、何か分かればお伝えしますね」と、帰って行ったレクターを見送り。まずは例の花を詳しく分析する準備をしながら、良い先輩の表情をとったギデオンの出すヒントに耳を傾け──ウェンディゴ! と例の唸り声を思い出せば。未だ一昨日のことだというのに、もう随分と長い間この村に滞在していたような気さえしてくる。そうして、すっかりこの村の違和感に飲み込まれていたビビとは違い、いつでも冷静な思考を手放さないベテラン剣士への尊敬の念に、キラキラと大きな瞳を輝かせ、ほぅ……と憧憬の吐息を漏らすと。──相手が"怨霊"などという非現実的なそれでないのなら、それはもう景気よく殴って倒せばいい話だ。レクターの話を聞く間、その青白さを隠せていなかった顔色をパッと赤くほころばせ、ぱちん! と元気よく両手を合わせれば──それじゃあ、今度は私の番ですね、と。鞄の中から得意げに薬草の調査用に持ち込んだ、その性質を調べる試験紙やその他の道具たちを取り出して。 )
( "古代、ガリニアの地を開拓した森の民にとって、蜂蜜は貴重な栄養源であり、(中略)、またそれは時として薬としても扱われた。"(サルトーリ,4962,p.124)
子供達に手を引かれ、そこへ辿り着いたビビの脳内に過ぎったのは、そんないつか読んだ薬学史の本の一文だった。あれから数時間、本来の仕事である薬草の調査と共に、花の成分を分析すれば。その薬効成分となるアルカロイドが、花の蜜部分に多く含まれていると分かったまでは良かったのだが。手持ちの道具だけでこれ以上判断するのは難しく。そもそも花一輪から採取できる量があまりに少なすぎるのだ。これでは身体の大きな人間一人に効果を与える為にどれだけの量が必要か──ああ、だから、子供を使うのか。そんな嫌な結論を頭を振って振り払えば。机上で解けないものは、脚で稼げばいい。そう先にフィールドの探索に当たってくれていたギデオンと合流したのが、半刻程前のことだった。
そうして、それは既に相棒が見当をつけてくれていたか、それともビビと合流してすぐのことだったか。兎に角、こうして村民たちが何か必死に隠しているそれを事も無げに暴くのは、彼らが取るに足らないと放置してきた子供達なのだから皮肉なものだ。着実な交友を築いていてきたビビと──特に本来であれば、自分達になど見向きもしないだろう大人の男性であるギデオンが、自らしゃがんで視線を合わせ、有効な情報の提供者として対等に扱ってくれるそれだけで、聡い子供たちは喜んで村のことを教えてくれるのだ。そうして、今回も案内された別れ際、「はちさんがお仕事しててあぶないから入っちゃダメなんだよ」と、彼らが普段村の大人から言いつけられているだろう忠告を得意げに残して、手を振って離れていく彼らには、その純粋さを利用して騙したようで申し訳ないが──なるほど。そこは、例の花畑ともほど近い、村の外れにある養蜂場。高度な技術のない村で、一輪の花から少ししか取れない蜜を集めるのに、これ以上効率的な方法も無いだろう。)
──……一輪で薄いなら、濃縮すれば良い、か。
どうしましょう、恐らく無人、ってことは無いですよね……
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