匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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レッ、レクターさ……
( ──もうギデオンさんったら、そんな必死になって隠さなくても、演出だって分かってますから。そう言い募ろうとした笑声は、激しい雷の音にかき消される。ギデオンの容赦ない雷撃をくらい、どうと倒れたレクターに駆け寄ろうとして、その進路を強硬に阻まれてしまえば。その常軌を逸した行動自体が、もう完全に後ろめたいことがありましたと自ら白状している状態に他ならず。そのあまりにもな焦燥ぶりに、思わず引きつった表情で相手を見つめ、それからさりげなく教授の様子を伺えば──プスプスと前髪の先を焦がしながらも、どこか嬉しそうにピクピクと悶えている頑丈な御仁に──うん、あれはほっといても良いやつだ、と一息ついて。
そうして、いつまで経っても話出さない恋人に、再度冷めた視線を戻せば。普段の涼しい顔はどこへやら、露骨な動揺に瞳を泳がせていたベテラン剣士は、やっと覚悟を決めたらしい。改めて手元のそれをよく見れば、ビビも見知ったその女性に、ギデオンがこうも狼狽える事情はよく分かる。確かに気持ちの良いものでは無いが、この人の往年の素行などとっくのとうに知ったものだ。何を言われても──ビビと付き合ってもいない過去のこと。特に咎めず、気にしなくていいんですよ、と流してやるつもりでいたというのに。 )
……この手の趣味って、なに……?
( 素直に謝罪すれば(謝罪することでもないのだが)良いものを、情状酌量を狙って自爆しに行ったのはギデオンの方だ。ビビはと言えば、そういえばエマさんが何か言っていたっけと。彼女達と体の関係があったことよりも、ブロマイドに描かれるほどの公然の仲だったことの方へ寂しさが募り、形の良い眉を下げると、小さくない胸を痛めていたというのに。相手の方はもっと別に後暗いことがあるというのだ。他でもないギデオンによって今、ヴィヴィアンは不安に瀕しているのに──不安な時は頼れる恋人兼相棒に聞けば解決する、といった反射に近い信頼も、この時ばかりは最悪な展開を招くばかりで。まさか対複数といった俗な可能性になど思いいたらず、真っ赤な顔でギデオンを見上げて、元気にはねた赤い耳をふるふると頼りなげに振るわせれば。かつて遊び人だった男の黒歴史を、意図せずその口から説明させようとしている、その隣の窓辺。カオスな光景が繰り広げられる一幕の横で。今朝は窓の外からでも伺いしれたはずの例の"花"が、今は幸せそうに倒れているレクターの機転によって、外から雨戸で隠されていることに気がつくのはもう少し後の話。 )
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