匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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まあ……、……?
とっても綺麗…………
( 振り返ったギデオンから、花を受け取ったヴィヴィアンもまた一瞬。その妙な違和感に首を傾げてはいたのだが、ふと表情が変わったのは、曰く香りに効能を持つらしい花をまじまじと観察し、その切った根元から滲む水分や、花粉に触れ、その成分に致命的な刺激がないことを(彼を疑うわけではないが、素人にとっては見分けが難しいものだ)確認した後のことだった。睡眠不足による判断力低下だけでなく、無垢な好意への油断もあっただろう。未だ薄暗い部屋の中、まるで発光しているようかのような赤い花弁に鼻を惹かれて、その甘やかな香りをたっぷりと吸い込んだその瞬間。それまで燻っていた違和感がぼんやり消え失せ──とはいえ、あくまで初めて見た花に対する、自然な範疇を逸脱しない感動に、うっとりと目元を細めれば。優しく撫でてくれるギデオンに、手の力だけで擦り寄ると、その程よく筋肉の付いた分厚い肩に丸い頭をそっと委ねて。
今この瞬間、ビビを力付けたのは無垢な少年には違いないが、その優しさを受け取れるほどまで回復させてくれたのは、他でもないギデオンの献身によるものだ。昨晩の事件から初めて、やっとその表情をほころばせ。人懐こく、触れた頭をくしゃくしゃと擦りつければ。エデルミラ不調の中、代理でクエストを先導すべきギデオンが何故、こうも付きっきりでビビの面倒を見ていられたのか。──聞けば当然、ギデオン本人はヴィヴィアンのためだと答えるに違いないのだが。それに甘えて、ヒーラーとして、冒険者として、求められているものへと気づかなければ嘘だ。昨晩はこの村自体へ恐怖を覚えていたヴィヴィアンだったが、どこの国でも、時代でも、子供というのは無垢で、何物にも染まっていないまっさらな存在だ。ビビ達現代人から見た"常識"を、この村に一方的に押し付けるのは間違いに違いないのだが。これから、否応なく外部との交流に巻き込まれていくだろう彼らが、酷く衝突し摩耗することくらいは防げるかもしれない。そうして、それまで色濃い疲労を滲ませていたエメラルドを、強い意志に輝かせると、「とってもいい香りですよ、」なんて、未だ少し震える指をギデオンに絡ませ、近づいてきた顔に花の影でキスを強請ったのは、もう一度踏み出すための最後の勇気を分けて欲しかったためで。 )
ギデオンさん、昨晩はごめんなさ……ありがとう、ございました。
この子にもお礼がしたいんですけど……その、ついてきていただけませんか?
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