匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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そっ、そんなこと……そんなこと、……ぅもん……、
( そんなこと、言われるまでもなく自分が思い知っていることで、大体そういうことを言っている訳じゃないのだ。普段は愛しい、これだけの年の差を持ってして、案外余計な一言を黙っていられない恋人の可愛らしさも、今は全くの逆効果だ。真っ赤な頬を膨らませ、「ありがとうございます!」と、ギデオンが目玉焼きを放り込む皿を両手でそっと抑えると。──昨晩に一昨日の番、さらにその前の晩も、前の前の晩も。覚え込んだ快楽を目の前に、無理やりどころか自らもっとと願った記憶があるだけに、相手へと向ける視線や口調が強くなるのは、自分でも八つ当たりだと分かっていて、糾弾する語尾がじわりと弱る。
ところで、ビビはパンのバターはたっぷりと耳の縁まで塗ってから、こんがりときつね色になるまで焼き色をつけたい派なのだが。未だ忙しなくダイニングに立って、香り高い珈琲を入れてくれている恋人の一方で。当たり前のように腰掛けて、"私、怒ってます"と、ゆで卵のような眉間に皺を寄せ、きゅっと吊り上がった目元を恋人に向けながらも、「お願いします!」と、たっぷりバターを塗りたくった白いパンを差し出す娘の、いつものように焼いてもらえると信じて疑わない様は、ここ数ヶ月のギデオンによる甘やかしの賜物で。それ以降も、諦め悪くぷりぷりと口では文句を言い募りながら。ギデオン相手となると、どうしてこうも警戒心が仕事を放棄するのか。しばらくして、はっと"良い言い訳を思いついた!"とばかりに、大きな瞳を輝かせれば。その怒っている当人に向け、どこか褒めてほしそうな節まで感じる、無邪気で自慢げな表情を浮かべて見せて。 )
違うもん。私はっ、……知ってたらしなかったし──……!
ギデオンさんがしてくれること、全部好きになっちゃうんだから、ギデオンさんのせいだもん……ね、そうでしょ?
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