筆者 2022-05-22 20:58:31 |
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いや…まぁ、いいんだ。
私は、はっきりと言葉にして表現するのは苦手だから、キミのように素直に示してくれるのを見ると、すっきりする。
( 食器を下げ終えれば、居間から聞こえる相手の言葉に耳を傾けながらすぐに戻ってきて、もう一度腰を下ろす。
比較的穏やかそうに言葉を返せば、先程横にまとめた書物の山から、自分が持っていたあの小説をもう一冊取り出して、静かに眺める。
担当者なんかには、意外と感情が表に出やすいとは言われるが、それはあくまで表情の話で、自ら口にすることはあまりない。だからこそ、代わりに怒りを表してくれる相手には、少し感謝の意を示す。)
…しかし、キミにとっては随分と面白くない話をしてしまった。
同居を解消したくなったのなら、日が浅いうちに教えてくれ。
( 本から顔を上げれば、此方の視線が相手の瞳とぶつかって一瞬言葉を詰まらせる。今更ながら、こんな事実を告白してしまったことに罪悪感が湧き上がるのだ。
これから本格的に同居生活が始まるというのに、若い青年には嫌な思いをさせてしまった。こんな40代を目前にした大人が、自分の父を好きだなんて…、しかし、この同居を取り消したいのならば、それは決して遅くはない話だ。 )
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