筆者 2022-05-22 20:58:31 |
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……確かに、“ 知らない ”って言うのは罪だよな。
( 言葉を詰まらせ、下を向く相手に、一度持ち上げた食器を再度卓上へ。そして、傍へとしゃがみ込めば栗色のその髪を乱暴に撫で回した。)
それでも一応、今の私があるのも先輩のおかげなんだ。
…勿論、キミに会えたのもな。
私が今も一人でいるのは、私がそう決めたからだ。
( 父を殴りたいと呟くその姿に、眉尻を下げて笑ってしまえば、次こそ立ち上がって食器を台所へと下げに行く。
先輩を好きになっていなければ、もし、この願いが成就してしまっていたら、きっと小説家としての小波澄香は存在していなかっただろうし、今目の前にある彼と、こうして会話することもなかった。決して、辛いことばかりではなかったと、そう言い聞かせている。
この歳になって、自分がまだ独身で、たった一人広い家で暮らしているのは…確かに、未練もあったかもしれないが、それは自分自身の選択だ。彼が、自分や自分の親を軽蔑する理由であってはならないと、そう思う。 )
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