筆者 2022-05-22 20:58:31 |
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…キミは、父親と違って鋭いな。
先輩にも、それほどの感性があって欲しかったものだ。
( 思いが伝わってきた、そう述べる相手を見て、フッと目を細めて悲しげにも嬉しそうにも見える顔で笑って見せた。
初めてその本を見せた時、彼の父は、ただ、凄いと褒めてくれた。惹き込まれる話だと言い、よくこんな話が思い付くな、と此方の背中を激しく叩いてきたっけ。
目の前にいる彼と同じ栗色の髪に、それに似合う明るく無邪気な笑顔で “ 想いが伝わった ”と言われていれば、どんなに、嬉しかった事だろうか。)
……昔、私の想い人が、早くに結婚して子を持った。
祝福こそしたが、どうしても、その子には会えず、拒否してしまっていた。
その子が産まれたことで、私の望みは叶うことが無くなったからな…拗ねて、いたのかもしれない。
( 一度止めた手を再度動かし、飲み物を一口飲めば、静かに言葉を続け、彼の瞳を見つめた。髪の毛に留まらず、彼には面影が幾つもある。昨日、はじめて見た時、無意識に目を逸らしていたのかもしれない。
自分の初恋の相手が誰なのか、それはバレてしまっても構いはしない。
どこか、聞いたことあるような言い回しを告げては、空になった食器を重ねて立ち上がった。 )
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