匿名さん 2022-05-05 14:12:04 |
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( てっきり、怖がられ、非難されるとばかり思っていたが、相手の反応はそんな予想とはまるで違い、左手の甲へ口付けを落とす様を、髪の隙間から物珍しげに眺めてしまう。
そして、腕を優しく引き寄せられれば、傷口に触れる相手の舌や啜る感覚に眉をピクリと動かし、思わず声を洩らして息を吐く。)
……違う。俺はもう…人を殺しても何とも思わない。
それぐらい、俺にとっては、当たり前の事なんだ…。
( 安心して と声をかけてくれる相手に、仕事後静かに高揚していた心や体も徐々に鎮まって、段々と左腕の傷口から発する痛みがじわじわと伝わってくる。
そして、「辛い」と比喩してくれた相手に、ゆっくりと首を横に振りつつぽつりぽつりと言葉を発した。この仕事自体を辛い、なんて思ったことは無かった。しかし、人の命を奪う行為を辛いと思えない自分が卑しくて、それは確かに、胸に秘めた悲痛なのかもしれない。
この醜い自分を目の当たりにしても、見せてくれてありがとうと礼を述べてくれる相手は_なんて優しくて、なんて異質なんだろう。
此方を引き寄せてくれる相手の腕を掴み返せば、物悲しげな目で彼を見た。彼になら、なかなか言えなかった望みも言えるのだろうか。あのゲームで勝利した、その報酬を今、言ってしまってもいいだろうか。)
…………こんな醜い俺でも、愛してくれないか。
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