匿名さん 2022-04-24 11:11:17 |
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( 自身のシャツを袖から破き女性へ一時的な止血処置を施している最中、今までの不満不条理が一時滲み出た、鈍く沈み込んでくるような低い声が背中に響いた。氷を当てられたかのように恐怖が伝いながら振り返れば、端正な顔立ちに似合わない煌めきを放つ焔の瞳が非難と憤怒を宿らせている。__ああ、間違えた。先程の言葉を撤回する暇もなく彼はひらりと金色の髪を風に靡かせ闇夜に溶けていく。早く拘束しなければ、そう思い糸を反射的に集めようとした中瞳に飛び込んでくるのは痛々しい体で冷たい路地に横たわる二人の姿。そして自分の行動を、どこか軽蔑と失望を孕んだ表情で恐ろしいほど真っ直ぐに見据えるありし日の弟の姿。「 負傷者三名を医務室付近に運びます。扉を開いておくので医療班は現場付近の怪我人への処置をお願いします 」インカムにそう呼び掛ければ、自分が一番とるべき行動に逆らい女性を支えながら医療班へと引き渡す。同じように路地に横たわるボーイふたりの体を医療班と三人がかりで運べば扉の中へと通し。文字通り頼みの綱である糸をその場に残し、医療班へ指示を出せば生身のままでとうに見えない彼の背を追って闇夜の中へと走り出した。想像以上に悪魔による被害は大きく、凹んで凹凸を生み出している看板、ガラスがわれ剥き出しになっているネオン、あちこちに散らばっている注射器。事態とは対象的に軽快な音を立て注射器を踏みながら血痕を追いかけ闇雲に人気のない繁華街を駆ける。「 アルドさーん!ごめんなさい!私が悪かったです! 」勿論こんな言葉で彼が見つかることなどないと脳の片隅では痛みを伴うほど理解していながら、か細い息継ぎが混じった破鐘のような声は街中を幾度か反響すれば消えてゆき。大きな勇気あるとも無謀とも言える行動で、必死に彼が向かったであろう血痕の方向へと足をただ動かし )
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