匿名さん 2022-04-24 11:11:17 |
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( 返ってこない言葉と冷淡な反応に少々心が苦みを味わうが、その背中の暗い海の水面のように光と闇のぼやけた境界線に混じる一種の沈んだ寂しさから目を離す事は出来なかった。一ヶ月ほだ前、ただ一つ目的の為に手段を選ばず文字通り身を削り代償を払い続けている彼を見た時から。その姿に哀憫と名付けるには躊躇われる、言語化できない感情をずっと心の奥底で持て余し続けている。八の字に下がった眉を戻すように彼の手首の動きを見れば自身でも分かるほどには表情は和らぎ、不安もありつつも穏便に業務を終えられる事を何となく予想していた。「__了解、市民の保護を最優先に現場に急行します 」直様その予想は甘い希望的な観測であったと言う事を見に染みて理解すれば、悲鳴を上げながら恐らく悪魔を目撃したのかパニックに陥った群衆が泥のように揉み合いながら我先に此方へと向かってくるのが見え。彼に視線で合図を送れば、波に逆らうダイバーのように群衆を必死に掻き分け悪魔の元へと着実に進んでいた。段々と人が少なくなってきた頃、暗く湿った路地裏に血溜まりと共に膝を抱えその場に蹲る一人の女性を見つけ。街中を歩くのには余りにも不恰好な、ほぼ下着同然のこの街では珍しくない職業に就いている事が伺える。冷静に判断するより先にその女性へと駆け寄り、声を掛けるも返答は返ってこずか細い息をゆっくりと紡ぐのみが精一杯のようで。糸を集わせようと神経を集中すれば、黄色い瞳が特徴的な上司の“監視を第一優先に”と今にも矢のように全身を貫くような本能的恐怖を抱かせる声が脳内で反響する。「 お願いだから勝手な行動しないでください!私マキマさんに何されるかわからないので! 」お願いというよりは祈りや縋りとも形容できる声をトリガーに、彼の手に絡まった銀糸を自身の掌の中へと集める。そうすれば粒子状となった欠片はまた糸へと姿を変え、公安の医務室付近へと繋がる人一人が通れるほどの穴を作り出し。 )
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