オペラ-罅隙- ／ 〆

(廊下の真ん中で宥められるように抱き締められ驚きから肩が一瞬跳ねるも、厚い胸板へ顔を埋めて男女の体躯の違いに緊張し。躯が固まったま自室へ入室する事で、改めて近付くまで来ていたことを知る。先程の自身の行動を振り返ると、廊下は誰かと鉢合わせしてもおかしくない場所なので危機感の無さを猛省し「……ありがとう。俺のことは無理に信じなくていい。その分俺が明人を信じて大切に想うから……謝るな。」背中を撫でる手付きが心地好く、瞼を閉じてはあやしてくれた事に対しての感謝を伝え。“傷つけたくない”というその気持ちが嬉しく、明人から直接信じられないと言われ踏ん切りがついたのか背中へと腕を伸ばし、優しい手つきでそっと抱き寄せ。
櫻子が質問した直後に明人は離れて鈍い音が響き。目の前で全てを目撃しているのもあり、櫻子が受けたわけではないのだが想像から表情歪み。床へしゃがみ込む姿を見て痛みで立ち上がれなくなってしまったのではないかと櫻子は勘違いし、慌てて近寄るとしゃがみこみ目の高さまで顔を寄せ。その口振りからあの質問はやはりまずかったかと反省し、そこでやっと耳や首筋まで紅く染まっている様子に気付き。鈍感な桜子は紅くなった本当の理由に気付くことはなく、その紅さから発熱しているのではと勘違いするほどで。俯く明人の頬へ両手伸ばし顔を上げさせ、体温計の代用としてやむを得ず額同士で熱を計測し。)

……熱はないみたいだな。背中はまだ痛むか？