匿名さん 2022-03-14 00:31:01 |
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( 櫻子の僅かに潤んだ目に気がつけば重苦しい罪悪感と、言い様のない仄暗い快感が同時に湧き上がる。櫻子が必死になって言い募る言葉が、一昨日からずっと自分の機嫌をとるための虚辞にしか聞こえず、どんなに真摯で誠実な言葉も心に届かずに耳で滑るようでいて、同時に信用することの出来ない狭量な自分に腹が立つ。やはりこんな自分といては櫻子が不幸になるばかりだと思ってはいても、手放すこともできそうになくて、最早自分でも何がしたいのか分からない。複雑な内心を覆い隠すよう無表情で首筋の華を見つめて )
……ごめんな。
( と、ぽつり。ふと視線を櫻子の顔に移せば、此方を求めるような熱を浮かべた表情に堪らなくなって頤に指をかけ、その柔らかいと知っている唇に自分の薄いそれを寄せて。これまでのような激しいものではなく、ただ今ここで自分を熱く見つめている櫻子が本物かを確認するように、優しく数回はむだけの其れを落とせば、やはり愛しさと満足感と同時に、迂闊な櫻子への心配から来る苛立ちも湧き上がって。どの口が言うのかと、あまりに言う権利のない言葉に自虐的な笑みを浮かべれば、吐き捨てるような調子で忠告して。 )
唇への口付けは愛情、だったか?……そんなもの、なくたって幾らだってできるんだよ。
男ならこの先のことだってそうだ。だから……だから、挑発するような真似はやめろ。お前が無駄に傷つくだけだ。
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