匿名さん 2022-03-14 00:31:01 |
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( 肩を揺すられている最中に精神は殆ど覚醒し、遮光カーテンの隙間から漏れる光の筋に目をやれば朝礼の刻限が迫っていることにも気がついて。それでも弾んだ声音に彼女の気が緩んでいると気がつけば、それが櫻子の中で未熟で頼りない弟のようなポジションであろうとも、櫻子に見放されないのならそれで良いと、朝の支度をしながらほくそ笑む。休暇以前であれば時間のかかる支度に柾を先に食堂にやるか、自分が早く終わった日は席をとっておくと1人でさっさと出ていってしまうのが常だったが、今日は素直に柾の隣をついて歩いて。それ以降もまるでこの2日何も無かったかのように明るく軽薄に振舞ってはいるものの、朝食後も全てにおいてさりげなく柾について回るのは内心では信用していない不安による監視であって。
そして迎えた昼休み、流石に教官に呼ばれてしまえば柾についている訳にもいかず渋々1人で教室を後にし、用事が終わって教室に戻って来ると、柾を取り囲む連中のニヤついた顔と、"蚊に刺された"などと無理のある主張をしている櫻子に大方の事情を察知する。もう少し上手くやれよな──と、自分がしたことを棚に上げて勝手に鼻から息をつけば、自分が入って取り成しても余計泥沼となるだけだろう、それよりは気を逸らしてやった方が……と、目を惹く教室への入り方という根が陽気な三枚目らしい思考をしている間に、周防が有象無象を蹴散らしてしまって。助けられ安心した笑みを浮かべる柾と、その顔を向けられている周防、そして廊下でタイミングを見計らっていた自分というこれ以上なくみっともない疎外感に襲われれば、教室へ入り損ねて立ち尽くす。更に柾の頭を撫でた周防が、何やら耳元で囁いて柾の首筋に触れたかと思えば、柾の肩が普段見ないような動きで跳ねたのを目の当たりにして、思わず大きな音で教室の扉を開けてしまって。 )
うわっすまん、手が滑った、悪い悪い。
( 一見白々しい定番の言い訳も、普段から明るく人望のある明人があっけらかんと頭をかけばそれらしいものに見えて。2人以外の明人に集まっていた耳目がやれやれと各々の手元に戻っていく中颯爽と自席に戻ると、自分より1寸ほど高い周防の顔を一瞥しながら、態とらしく親友の下の名を呼んで見せ。勿論柾に触れた周防にも冷たい視線は向けているが、何度忠告しても隙を見せる柾にも苛立ちを覚えて、柾の襟元に伸ばした手でそれとなく周防の手を払い、さりげに"ゴミ"とまでいい放てば、ニコニコと人好きのする笑顔で柾の肩に腕を回し首をかしげ。 )
柾、襟元ゴミついるぞ。
なにか盛り上がっていたようだが、2人でなんの話をしていたんだ?
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