匿名さん 2022-03-14 00:31:01 |
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( シャワシャワとクマゼミの鳴く帝都晩夏の日差しにシャツが背中に張り付くのも、ここで思い起こされる楽しかった思い出の数々も、健気に微笑みを浮かべる櫻子も、その全てが息苦しく鬱陶しい。最初に裏切ったのは彼女の方だが、昨日からの自分の行いを思い出せば彼女はとうに自分を忌み嫌っているだろうと疑わず。それでも当て付けかのように"清く正しい"態度を見せる櫻子の汚い精神のはらわたを暴こうと粗暴な発言を繰り返すも、頑なに苦しさを押し込めた笑顔が浮かべられるのを見れば、自分の尊厳を踏みにじられて尚、学校に報告されるのがそんなに怖いかと虚しく思って。更に畳み掛けんと無理やり口角を釣り上げたところで頬を叩かれ、見るのは2度目の彼女の涙に目を見開いて。 )
……ははははっ。本当に、男を騙すのが得意だなあお前は!そんなに汐兄様の夢が大事か!
そこまで言っておいて何を生娘ぶってる、ああそれも演技か?男の黙らせ方なんぞ知ってるだろう、こうして引き寄せて……口でも吸ってみたらどうだ。
( 俺だってお前が一番の親友で、バカ騒ぎをしていたあの日に戻りたい。大粒の涙が白い肌の上を滑っていくのを眺めていれば、櫻子の言葉に一瞬心を許しかけて期待に震える手を伸ばし、もう一度俺とやり直してくれるかと手と同様に震える唇で発音しかけたところで、櫻子の赤く染まった頬が目に入れば冷水を浴びせられたような気分となって。嫌いな男に触れられて喜ぶ女人がいる訳が無いと逸らされた顔を呆然と見つめれば、あんなに真摯に聞こえた言葉たちも最早あまりに明人に都合の良すぎる空言にしか聞こえず。まんまと櫻子に騙されかけた自分のおめでたさに顔を覆うと笑い声をあげて。櫻子の手をとって自分の胸ぐらを掴ませると顔を近づけ、櫻子がグズグズしていれば「俺はお前の秘密をバラしても構わないんだぞ」と脅しの言葉を付け加えるだろう。そして一瞬悲しそうに自嘲の表情を浮かべれば、悲痛な声でぽつりと )
お前が綺麗だなんて、俺がどうかしていた。
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