着ぐるみパンダさん 2022-02-12 16:39:37 |
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( 明らかに高くなった体温も、魘されるように上げる声も、自分にはどうすることも出来なくて、それが情けなくて、心配そうに毛皮を撫でていた手に力が入る。
しかし、次の瞬間には大きな腕で引き寄せられ、耳元から低い声が脳裏に響く。心配しているはずなのに、情けなくて握ったはずの手には汗が滲み、本能が逃げ出したいと言っているのが分かる。
それでも、頬に添えられたその手に、静かに己の手を重ねた。)
…私は、助けを呼ぶことも、手当をすることも、何も出来ないの。それどころか、誰かの力を借りないと行くべき道さえ分からないわ。
だから、いいのよ。
もし、本当に私を食べて、狼さんが元気になるのなら。
それでやっと、私も誰かの役に立てるんだもの。
( 自らを裏切り者のように扱う相手に、そんなことは無いと伝えたかった。それどころか、自分の方が周りの期待を裏切り、病に犯され、使い物にはならなかった。
そんな自分に最初で最後に優しくしてくれた相手だから、本能が邪魔をして僅かに震える手も声もお構い無しに、優しく、笑ってみせた。
どのみちこの森の何処かで果てるのであれば、親切をお返しした方が、少しは自分の気持ちも晴れやかなのだ。 )
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