諜報部員 2021-11-28 21:49:05 |
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(アーネストは、慌てふためいた様子で携帯を操作するオリヴィアを横目で確認した。諜報員として些か不安を感じさせるその姿。それでも彼女は競争率が高い採用試験をパスし、厳しい新人訓練を潜り抜けてきたと思うと、何とも不思議な話だ。しかし、だからといってアーネストが彼女の能力に疑問を感じているという訳ではない。それどころか彼はオリヴィアの仕事ぶりを多少なりとも評価していると言える。今回の任務の同伴者としてオリヴィアを選んだことが正にその証拠だと言えるかもしれない。恵まれた容姿に万人受けする性格。そして彼女が時折覗かせる諜報員としての才能。彼がオリヴィアのことを"原石"と見なしていることに間違いはなかった。__アーネストは視線を階数表示板へと向け、ゆっくりと変わっていく数字を心の中で数えた。スリー・トゥー・ワン、そしてG。そこで扉は再び重たげに広がっていく。目的地はもう一階下。そう考え開閉ボタンを押そうとした時には、もう既に彼女の姿はエレベーター内にはなかった。響き渡る足音と困惑。足早と出口に向かっていく彼女の姿にアーネストは深々と溜息をつくと、自身もエレベーターから降りて彼女の後を追うようにエントランスを歩いていき。出口付近に立っている警備員に対して通りすがりに職員証を見せ、ガラス扉を開ける。建物の外に出ると、黒く色塗られたロンドンタクシーが後部座席のドアを広げて停車しているのが見えた。中には運転手と、その彼に行先を伝えているオリヴィア。階段を降りたアーネストはそれに乗り込むと運転手の顔先にまた職員証を翳し。それを確認した運転手はハリッジ港へと向かうためにアクセルを踏み込んだ。タクシーがテムズ川を沿うようにして走行し始める頃には、アーネストの苛立ちも収まっていた。彼はその茶色く濁った川を眺めながら先程のことを思い巡らした。彼女の咄嗟の判断。それによって、駐車場までの時間や、そこからの警備員らによる車内検査の時間が少なからず短縮されたことだろう。オリヴィアのことを一瞥する。再び窓の外を眺めた時のアーネストの顔には、悪くない、と小さな笑みが浮かんでいた。__ハリッジ港に着いた時には時計の針はやはり14時前を指していた。車は港の中を順調に進み、途中の5つほどある環状交差点を通過したところで、30ヤード前方にチェックインカウンターが見えてきた。そこには数台のパトカーが停まっており、警官が停車するようジェスチャーで促している。タクシーは徐々にスピードを落としていき、ついに窓口の横に停まると、警官は後部座席に向かって立ち入り禁止となっていることを伝えてきて。アーネストが彼に身分証を見せ、保安局の者だということを伝えると、タクシーは再び走り出し。ゲートを通過すると、タクシーは漸く埠頭に入った。目の前にはフェリーが停泊しており、その下にはフォードの白いバンが停まっている。バンの横には、黒ずくめ──ではなく至って普通の格好をした、しかし屈強な体格の男たち5人が立っており、こちらをずっと見ているのがわかった。執行人たち。アーネストはタクシーから降り、彼らからトランシーバーを受け取ると )
三手に分かれて捜索するぞ。ジャックソン、お前はそいつと一緒に行け。わたしは操舵室に行って船内映像を確認してくる。──皆分かっているとは思うが事を荒立てずに連行しろ、いいな。よし、行け。
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いえいえ、無学だなんてとんでもないです!あり得たかもしれないロンドンということですので、この世界だけの設定などをどんどん追加していけたらなぁと思っております。先だって勝手ながら"執行人"だなんてものを作ってしまっていたのですが、宜しかったでしょうか…?一応、保安局お抱えの特殊部隊(執行人はその隠語)という設定で用いさせていただきました。
あー!!いかにも諜報戦って感じですごく好きです…!!一つこういった展開が思い付いたのですが、いかがでしょうか?!
①船内に潜入したシャーロットはもぐらを射殺し、彼がドイツへの手土産として持っていた情報を処分。しかし彼が持っていた記憶媒体(マイクロチップなど)の一つはダミーで、本物のチップは別の場所(靴底の中など)に隠されていた。
②後日シャーロットはチップの中身を開いたことで、それがダミーだと気付く。
またMI5は彼の所持品を検査し、本物のチップを発見していたものの、そのことは機密情報として役職付といった一部の職員にしか知らされていなかった。
③もぐらの死を他殺だと睨んでいたアーネストは、オリヴィアに本物のチップが見つかったことをわざと仄めかし彼女が保管室へ向かうか確かめる。
アーネストは保管室で待機、もしくは保管されているチップを発信機付きのダミーと取り替える。
④シャーロットがスパイであることが発覚。
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