諜報部員 2021-11-28 21:49:05 |
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( 他愛無い雑談にすら満たない言葉一つ届きやしないらしい。否、届いてなお無視して居るらしい方が正しいか。先を行く男の背を追随する様にして、己の首から垂れ下がるカードをセンサーに翳した。厳重過ぎる警備体制は過去の失態によって編み出されたイギリス随一のシステムを駆使して居る。システムを欺く為に様々な犠牲を払って迄手に入れた職員証の事を思うと、ずしりと首が重くなった様な気がしてしまう。昔MA6へ諜報員として忍び込んだ男_ソ連から送られてきたキム・フィルビー_は、その優秀さで信頼を勝ち取り、イギリスの情報の髄までしゃぶり尽くした所でソ連へ亡命したと聞く。その成功から学ぶ事も多ければ、彼の失敗から学ぶ事も数多と存在する。キム・フィルビーと言う男はイギリス__この保安局にとっての汚点で在り、私も含め戒めとして歴史に名を刻んだ一人だ。偽りの名を刻む職員証へ視線を向けつ過ぎし日へ想いを馳せた時間は数秒の事、翳し終えたそれを首に掛けたままで胸元のポケットへ仕舞い込み。持ち前の頭脳と洞察力を遺憾無く発揮し、32とも言う若さで仕事に関す信頼を得る斜め前の男へ視線を滑らす。 カチカチと無機質な音しか立てぬボタンを幾度と無く押し込む姿からは苛立ちが見て取れた。さて、次に彼が口を開くとしたら何を言うだろうか。逃亡と洒落込む人間に対し最も有効なのはその手段を潰してしまうこと。加えて今回は幽霊の如く失った彼の位置さえ把握して居るのだから、彼の考える事など想定するに容易い。先ずは封鎖してしまえと言うのだろう。__元来のシャーロットで有れば重く硬い扉が開くよりも先に彼の指示を先回りしていたことだろうが、オリヴィアと言う存在は然程秀でては居ない。下手な優秀さを見せ付けるより多少の油断を求める己のとった行為は、漸くやって来た鉛の箱に彼と共に飛び乗るだけ。斯くして彼の唇から飛び出た言葉に慌てふためく演技を乗せてポケットに仕舞い込んだ携帯端末を弄りはじめ。此処で守るべき"仲間"へ連絡が出来れば良かったのだが、彼と最後の逢瀬はとっくに終わってしまっている。一切の情報を始末してしまった私達の間に何が有ると言うのか。口惜しさをほんの少し眉を顰める事に留め置き、グランドフロアの到着を告げる様に開く扉から即座に足を踏み出した。今から駐車場へ向かい車を出すよりも、動いているそれに乗った方が多少の時間は短縮できるだろう。エレベーターを降りる頃には少し早めだった歩き方を更に早めて駆け出す。格子状のガラス扉を押し開けてアーチ状の屋根の下、石の階段を降りた先でタイミング良く待ち構えていたかのようなロンドン・タクシーを捕まえてから )
ハリッジ港まで、兎に角急いでお願いできますか?__アーネストさん、此方に。12時前には着けるかと。
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ご返信有難うございました!MI5についてまだまだ無学な為、誤っている認識などございましたらご指摘ください!
証拠の隠滅に気付いて再び動く…シャーロットなら確かにやりそうです…!因みに動くのは射殺死体発見直後でしょうか?それともそのもっと後、アーネストがオリヴィアに疑念を抱いた後の事でしょうか?後者で有ればそれが決定打としてバレるのも有りですね…、むしろオリヴィアを誘き出す為の罠としてアーネストが残してしまった証拠を使うのも良い…!!
持ち前の洞察力でバンバン見抜いちゃってください。そのトラウマも攻防戦で如何に作用してくるか、今から楽しみですっ!
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