観測者 2021-09-18 20:02:12 |
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>ロイ
(部屋を歩き回っているうちに微かな違和感を覚える。ティースプーン一匙くらいの些細な、余程神経質でない限り調べないそれ。普段なら探さないが、もしも問題が見つかれば提出を遅らせることができる。仕事を放り投げて、改めてじっくり部屋の中を眺めた。取り囲んでいた本の山が崩れているのはさっき自分でやった、紅茶がないのはそもそも作ってないから当然……ならば物の配置か。入り口に近い数箇所を軽く調べて、確認する。微妙なズレから推測するに、倒したものをわざわざ元通りに戻している?何のために──部屋の主人に気付かれないため、と考えるのが妥当だろう。自分を害するのが目的なら、几帳面にこんなことはしない。つまり、狙いは錬金術。出た形跡がないため、十中八九隣の部屋にいる。一瞬近衛兵を呼ぼうかと思ったものの、この鍵を開けられる程の腕前なら無駄だろう。それに、軽々と複雑な錠前を解くような『それ』に興味がある。部屋の扉に手をかけて、本を読み耽る侵入者を見つければ皮肉混じりに歓迎の言葉を)──こんな朝早くから仕事とは、最近の泥棒は勤勉なんだな。朝食ぐらい食べたらどうだ、ミスター?
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