ビギナーさん 2021-09-11 06:53:39 |
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(夕暮れ。今にも泣き出しそうな空の色をしている。少年はーー汐は薄暗がりの中にあるゴミの中に仰向けに寝転がりながら、薄らぼんやりとそんなことを思う。ーーヘマをしたものだ。普通だったらしないミス。少しばかり足がもつれて、運んでいたモノを壊してしまった。中身は、黒くて小さいけれど重くて、人の命を奪うモノ。カンカンに怒っている人たちからようやくの思いで逃げて。優しいひとが。組織の中でも一等汐に優しくしてくれていた男の人が、街を出なさいと逃がしてくれたけれど、もうあの街には戻れないだろう。きっと次はない。命からがら着の身着のまま、何も持たず逃げて、そうしてこのゴミ捨て場にたどり着いた。優しい人にはついぞ礼は言えなかった。大丈夫かしらと思う余裕もない。身体は殴られた時の傷がじくじくと痛むし、何日も逃げていてご飯を食べていなかったから、胃はしくしくと痛むし。自分だって疲弊してるのだから、人のことを思う余裕なんてない。おかあさんとおとうさんのところにいた時を思い出す。ああ、いやなきもち、と口の中が苦くなってきて、むにゃむにゃと口を動かす)
……おなか、すいたな。
(どこかの家の夕飯の匂いだろうか、美味しそうで温かな匂いが汐の鼻をつく。ああ、しあわせそうだ。望んでも手に入らなかったものだ。妬んでも羨んでも泣いても手に入りはしないから、とうの昔に諦めたものだ。……腹が空いた。何か食べられるものはあるかしらと、のそのそと起き上がり、今まで時間を共にしていたゴミを漁る。こんなのにはもう慣れっこだった。もう6年はこんな暮らしをしているものだから。きっとそこらの犬猫の方がよほどまともな暮らしをしているんだろうな、となんとはなしに思う。暫くガサゴソと漁るが、まともに食べられそうなものはない。動こうにも体力は尽きているし、お金だってない。明日にはきっと、自分は生ゴミになっていて、からすの朝ごはんになるのだろうなと思うとじんわり涙が出て、ゆっくりと瞼を閉じた)
(/読みにくいなどあれば……!遠慮なくご指摘ください!)
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