ノーマル 2021-09-07 06:50:28 |
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(どれだけ自分の料理に自信がなかったのだろうか、素直に美味いと伝えると、彼は皿と顔を交互に見て驚いた表情でいた。正直に言うと、実家が裕福だったために、この朝食の何倍も金のかかった料理は飽きるほど食べてきたが、これより美味い朝食は他に無いと思っていて。テーブルマナーや厳しかった親の目を気にして窮屈に食事をするより、自分が好きな時に好きなものを好きな人と、自由に食事することが、どんなに美味しくて幸せなものか。今までは外食をすることで、その自由の美味さを味わっていたが、彼の料理の腕はそこらの飯屋の数段上で、自分の胃袋はがっつり掴まれていた。)
いいんだよ、毎日凝ったもの作られたら俺の舌が肥えて、他のものが食えなくなっちまう
(喜んでいるようで、申し訳なさを含んだ苦笑いをする彼に、相変わらず軽薄な口調だが、自分なりに気にするなと伝えて。食費の問題も少なからずあったが、多少は手抜きしてもらわないと困る。毎日凝った料理ばかり出されてしまったら、いつか彼がここから出ていった後に、何を食べても彼の手料理以外は物足りなく感じてしまうのでは、なんてことを考えていて。客観的に見て、共同生活一日目にして少々買いかぶり過ぎではあるが、それぐらいこの朝食のインパクトも、今後の料理の期待も大きかった。そして、一足先に食事を終えて空になった皿をキッチンのシンクへ持っていき、先程彼が調理器具を水に漬けていたのに習い、皿も浸しておいて、席に戻りながらまだ食事中の彼に、「今度は俺が皿洗いするから、ブランはゆっくり食って休んでてくれよ」と伝える。朝っぱらから大掃除をして、その後すぐ調理をしていたのだから、横から見ていた自分よりも活動量は多いはずで、少しでも自分で出来る事はしておこうと。)
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