ノーマル 2021-09-07 06:50:28 |
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(大きく口を開けてトーストを頬張る姿はまさにイメージ通りで、豪快だなぁとシンプルな感想が浮かぶ。そして次の瞬間にはなんとも嬉しそうというか、幸せそうにも見える表情を浮かべて、口元も笑みの形を作っていた。あまりにも豊かで分かりやすい表情の変化に思わず驚いている間に、彼は早々にトーストを半分平らげていて、輝かんばかりの笑顔で『美味い』と、確かにそう口にした。それは待ち望んでいた言葉で、けれど真逆の意味の言葉が出て来る可能性も同時に考えていて、だからこそ今の今まで緊張していたはずで。…気が付けば、その緊張が丸ごと消えてしまっていた。いっそ無邪気に、あの人と似たようなセンスで料理名を問う彼に、少しだけ返事が遅れてしまって)
…あ、う、うん…まあ、そんな感じかな
(かろうじてそう答えてから、完全に手を止めたまま彼が食べる様子をじっと眺めてしまう。だって、今まで知らなかった。自分の作った料理を美味しいと言って貰えることが、そう言ってくれる人に食べてもらえることが、その様子を間近で見ることが出来るのが、こんなに嬉しいことだったなんて。あの人も毎回残さず食べていたから、美味しいと思ってくれていたかもしれないけれど…どうやら自分は、態度よりも分かりやすく言葉が欲しい性質だったらしい。あっという間に無くなってしまった彼の分の皿と、彼の顔とを交互に見やって)
まさか、そんなに喜んで貰えるなんて思わなかったよ…もうちょっと凝ったものが作れるような材料をお願いすればよかったかな
(昼用と夜用に考えている献立はどうしても似たり寄ったりかつシンプルなもので、万が一彼の口に合わなかったことも考えて、なるべく費用を抑えられるようにと、昨日はあのような買い出し内容を伝えたのだ。けれど、それが今は逆に申し訳なく感じて、嬉しい気持ちと相まってつい柔らかな苦笑が浮かんでしまい)
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