管理人@玄 2021-09-05 18:07:45 |
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【マルバス/王都郊外付近ー森/午後晴れ】
最愛の片割れに振られて傷心した心を癒すべく、片割れの昨日のスケジュールをぶつぶつと呟きながら思うままに散策する。自然が大好きという訳ではないが、ゆったりと心を落ち着けるには打って付けの場所であるが故によく足が向いてしまう。片割れの相棒であるブギーとは異なる生者の息遣いや視線を感じながら、そういえば生き物はこんなオーラだったと思い出す。あまりにも強烈な生者成らざる者と接しているため、そこら辺の感覚が麻痺しつつあるのは勘弁してほしい。
「オティスも酷いよねぇ…僕っていう家族がいながら赤の他人の骸を見に行くなんて。亡くなってもオティスに見てもらえるなんて狡い…オティスは僕だけを見てなきゃいけないのに……」
僕を差し置いて何様のつもりと名前も顔も知らない誰かに呪詛を吐き続ける姿は悪魔以外の何者でもない。ふと片割れを縛り付けて何から何まで自分が世話をしてあげて生活するのはどうだろうと考えかけて、ゆるゆると首を振って霧散させる。似たようなことを過去に実行し、死の間際を体験させられたことも一緒に思い出したのだ。後にも先にも片割れの相棒に本気で食い殺されかけた経験はアレだけにしたい。
「あぁ、オティスをぎゅーって抱き締めたい。仕事終わりの匂いを堪能したい。ずっと閉じ込めておきたい…はぁ……」
矢継ぎ早に欲望を思うがまま舌に乗せていくが、段々とトーンダウンし溜息と共に想いを吐き出す。先程から嫌でも感じ取る気配に思考が乱され、つい舌打ちまで漏れてしまう。オティスのことを考えて幸せだったのにと声にまでは出さないが、恐らく盛大に表情として出ているだろう。生憎、まだ傷心から立ち直れていないため相手をするのも面倒であるが、反応は返しておこうと気配の主を見やる。
「ねぇ、僕さぁ、オティスのこと考えてて忙しいの。用がないなら気配消してくれる?」
用があっても気配消して欲しいけどと最後の言葉はボソリと呟き、気怠げな目を相手へ向ける。
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