27836 2021-09-01 21:49:39 |
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なっあ!?
(茶化すように少し鼻につく高い声で相手に自身のセリフを真似られば、甘ったるい空気は一瞬にしていつもの二人のそれになり。羞恥心が爆発したように真っ赤に顔を染め上げ、驚愕の声を上げ。もしかしたら、相手が真似したその一言は、一番聞かれたくなかったものかもしれない。エッセル家には返しきれない程の恩があり、そもそも自身は主の婚姻についてどうこう言える立場ではなくて。浅ましい嫉妬と、不相応な独占欲は本当は見せるつもりなどなかったのに。じたばたと短い手足を動かすも、本気で相手の腕から逃げる気などはなく。「きっ、」いてたの!?「な!」ぜそれをっ「に"」てないし!と、途切れ途切れに不満とも悲鳴ともつかない擬音を発していると、少し反省の色を滲ませた声で相手から今のままでいたいか、と問われて。動きをぴたりと止め相手に視線を戻し、しばし思案した後にゆっくりと偽りのない気持ちを伝えることにし。)
そう、だね
(そこで、はたと自身を抱きしめる相手の腕に力が籠っていたことに気付き。それはきっと、羞恥心にかられた自分を抑えるためではなくて。大好きな彼の心を曇らせてはいけないだろう、と続けて声を絞り出し。)
もし、レイのお嫁さんになれたら…とか、考えたことがないわけじゃないよ。小っちゃい頃は、本気でなりたいって思ってた。
(気恥ずかしさに少し俯くふりをして、切なそうにひそめた眉を前髪の下に隠し。)
でも大人になると、現実が見えてきちゃう、というか…。レイはヒトで、貴族で、貴族の結婚は家のためにするもので…いずれはレイも、エッセル家のためにいいお家のご令嬢と婚約するでしょう?
(意を決して顔を上げ。うまく笑えているだろうか。もしかしたら、泣き笑いのような不格好な笑顔になっているかもしれない。)
こんな気持ちでレイの傍にいたら奥さんに申し訳ないから、専属メイドはあなたが婚約するまでかな、ってなんとなく思ってたんだけど……ダメだね。いざその時が近づくと、やきもち焼いちゃって。やっぱり、嫌だって思っちゃう。だから…本当は、
(いよいよ取り繕うのも難しくなり、相手の胸にそっと手を置き、頬をすり寄せ。相手の心音を聞いていると、少しだけ気持ちが落ち着くような気持ちがし。続く声は、きっといつも通り明るくなっているに違いない。)
ずっとずっと、今のままがいいかなぁ。レイが帰って来たときはお出迎えして、毎朝起こしに行って、寝相の悪い姿が見れるのも私だけで。私が作ったシフォンケーキを美味しそうに食べてもらって、角を撫でてもらえる。そんな毎日が、ずっと続いて欲しい。…それが私の幸せだから。
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