27836 2021-09-01 21:49:39 |
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(物言いが男の癇に障ったのだろうか。暴漢の目付きは途端に凶暴さを増し、一才の理性を手放したかのように見えて。そうして奴が懐から取り出したのは鈍く光る一本の刃物。自分の目にはその刃渡りは大きく映り、死を予感してしまい。きたる痛みに備えるべく、強く目を瞑って身を硬くして。最後脳裏に浮かんだのは、愛しい幼馴染の姿で。ただ、会いたい。そう願った刹那、信じられない呻き声が聞こえて来て。)
……__ア、
(弾かれたように目を開き、飛び込んで来たのは広い背中。聞いたことがないような相手の怒鳴り声に、肉がぶつかる鈍い音。そして、大好きな人の背中から滴る、赤い赤い鉄臭さ。)
レイッ!!
(瞬間、理解した。自分は相手に庇われた。なぜ、とかどうやってとか些末なことはどうでもよく、ただ自身が受けるはずだった傷を、相手が代わりに受けてしまっまという事実だけが重くのしかかり。相手の背中にはナイフが深く突き立てられていて。傷口から溢れ出した血が、目の前が真っ暗になりそうな早さで衣服を染め上げて。自身を縛る手枷も、足枷にも構うことなく転がるようにして相手に近寄り。)
レイ…っ、レイ、どうして…!血が、いやだっ…レイ!
(うわ言のように彼の名前を呼び。どうか、と信じてもいない神に、どうか彼が無事でありますようにと祈って。)
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