27836 2021-09-01 21:49:39 |
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(混乱する頭、言うことを聞かない体。酸素が足りないのか、あるいは多すぎるのか、呼吸が苦しくなるにつれ視界の端が暗転していき、気付いたときには手首に冷たい鉄の感触。背筋が凍り、咄嗟にそれを外そうと腕に力を込めたはずが、高圧的な声を聞いてしまい。絶望と、幼い頃刷り込まれた恐怖に支配され、するすると力が抜けていき。叫びたかった。けれど声は出なかった。逃げ出したかった。けれど足は震えるばかり。__助けてほしかった。けれど、縋るべき相手はどこにもいなかった。それでも弱々しく抗うことができたのは、奥底の本能が男を拒んだからだろうか。身の入らない抵抗は容易に封じ込まれ。)
……ァ、いや、イヤッ…!
(手に持っていた買い物籠が振り払われ、床に落ちるのを見て、やっとか細い声を発することができ。霞む視界の向こうでは、割れてしまった卵の大きな黄身が無機質な石畳の隙間に流れていき。幸せな時間を過ごすためにあったそれらがぐちゃぐちゃにされてしまった姿は、今の自身の自尊心と重なってしまって、不覚にも涙がこぼれ。無残な姿になった食材たちに手を伸ばし、男の手から逃れようとするも、角を折られた痛みの記憶に邪魔をされ続け、気付けば人目の届かない路地裏の奥に連れ去られてしまっていて。こんな所では、悲鳴を上げても誰も気づいてくれない。そもそも、ドラフの女が男性に組み解かれていたところで"そういう"目でしかみられない。助けを望むには、絶望的過ぎて。足枷をかけられながら、うわ言のように相手に慈悲を願い。)
やめ……っ、やめて、くださ……
(頬からつたう涙は酷く冷えており。体を這うように滑らされた暴漢の手は、ひたすらに生理的嫌悪を呼び起こして、その耐えがたい気持ち悪さに鳥肌が立ち。全身が汚されていく感覚に吐き気がして。本当は主に捧げたかった、彼のためにあるものだったというのに、そんな想いは前の男に理解されるはずもなく。嫌なのに。嫌で仕方がないのに、いつもの怪力を使うこともなくただただ涙を流すことしかできないのは、『諦めてしまえ』と囁くもう一人の自分がいるからで。__だって、もしかしたら。大人しくしていれば、"これ以上"痛いことはされないかもしれないじゃないか。従順にしていれば、少しだけ我慢をすれば、相手は満足して立ち去ってくれるかもしれない。ドラフの角は生え変わらない。また傷でもつけられてしまったら、一生その醜い角のまま生きていくしかなくなってしまう。ただでさえ欠けた不格好な角なのに、それがもっと、なんて。その姿をレイに見られたら、耐えられるはずがない。己の純潔なんて、最初から彼に捧げられるはずもないのだから__)
__『そうだ、アリアにお土産。あるんだった』
『これは花の香油だよ』
『髪につけたり、軟膏として使うんだって。アリア、水仕事多いからさ』
(…あぁ、違う。そういうことではない。主の言葉を思い出し、ぐ、っと強張っていた体に更に力が籠り。彼は、レイは、アトラリアをいつも大事にしてくれた。アトラリアを一人の人間として家族のように、対等に、たくさん慈しんでくれた。ならば。彼が助け、彼が大切にしたアトラリアが、傷つけられるわけにはいかない。彼を悲しませるようなことは、してはならない。)
誰か!助けてくださいッ!誰かぁっ!!
(まだ、恐怖に体は竦む。過去の記憶にがんじがらめにされ、男の体重に抵抗する力はかき集められない。だとしても、と。自身の体は自分だけのものではないのだ、と己を叱咤して、声を張り上げ。助けがくる確率がなんだ。立場の弱さがなんだ。それで諦めてしまったら、それこそ主に顔向けできないではないか。今の自分にできるだけのことをしよう。声が枯れようとも、手足や、大切な角を折られようとも。心だけは屈してなるものかと、闘志を奮い立たせ、男を睨みつけて。)
はなッ、せ!お前なんかがっ、私に、触るな!!
(/返しにくいだなんて、そんなことは全く…!お気遣いありがとうございます…こちらもノリノリですので大丈夫です!むしろハーゲン…ハゲ…とくすっと来てしまいました笑。引き続きよろしくお願いいたします…!(隠れ)
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