27836 2021-09-01 21:49:39 |
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(まるで地獄へと落とされて、その後天国に飛ばされたような気分だった。それくらい、相手から貰った返事に激しく気分を上下させられて。人異平等先進国の家との縁談は、やはり相手にとっても価値のあるものだったらしく、よい話であったと真摯に答えられ。目の前が真っ暗になりそうになった次の瞬間、相手はその縁談を蹴るつもりなのだと告げた。相手の目は射抜かんばかりに真っ直ぐこちらを見ていて、柔らかい漆黒は真剣な色を帯びており。そのときはじめて、自分の腕に力を籠め過ぎていたことに気付き、慌てて力を抜くが、距離は開けない。というよりも、相手から目が逸らせなくなっていて。)
あ!ごめん、痛かったよね!?ごめん…っ。
(声を裏返しながら、今度は痛めてしまわないよう細心の注意を払って相手の腕を擦り、申し訳なさに眉も、尖った耳も更に下がってしまい。ドラフ族である自分が少しでも気を抜いてしまうと、ヒトも、ヒトの作った物も、簡単に壊れてしまう。恐れ多くも、彼らはなんと か弱い生き物なのだろうと、憐憫にも似た気持ちを抱いてしまうことがある。事実、力でドラフと互角に渡り合えるヒトなんて、戦いを生業としている者たちが精々だろう。けれど、すぐに壊れてしまうような脆い生き物でも、彼らが儚いからこそ愛おしいと思い、弱いからこそ守りたいと心を震わせるのであって。この想いは受け取り手によっては、ヒトを見下しているように見えるのだろうか。この、ある種の傲慢さが、ヒト族が異種族を受け入れられない理由なのだろうか。…見下しているつもりでは、ないのに。
答えのない、非建設的なこの葛藤はさておき、目の前の相手に思考を戻し。期待に震える声で、話しの続きを促し。)
でも…なんで、断るって…?
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