27836 2021-09-01 21:49:39 |
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(大きな、温かい相手の手を頭に乗せられ、結われた髪を乱さないよう優しく撫でられ。髪から角に相手の指先が移れば、その体温は感じられずとも、伝わってくる細かな振動に夢見心地な気分にさせられ、ふにゃりと体の力が抜けてしまいそうになり。上半身の体重を相手に預けながら、まだお役目御免にはならないと照れながら告げてくれた主に大人気なく嫉妬してしまったことを恥じ入る。急に顔を合わせづらくなり、軽く身を捻ると相手の肩に額を当てて、男性らしい固さを持った腕にそっと抱きつき。)
そ、っか。まだ…
(そう、『まだ』だ。つまり、いつこの関係が終わるか分からない。不安を隠すように腕に力がこもり、弾力のある胸が相手に当たり。この、自身の子どもらしい体型に不釣り合いな胸部をアトラリアは恥ずかしく思っていて。それは、特になにもしていなくても、はしたない女を見る視線を送ってくる人が多いからで。その点、相手はその高貴な身分に相応しく、このような俗っぽい誘惑に後先考えず靡く男性ではなく、そこももちろん尊敬しているのだが。一度くらい、過ちを犯してくれないだろうか、と浅ましくも思ったことがないわけではなく。それこそ、『まだ』あの女性と『なんでもない』うちに。)
うん。レイが結婚するまでは、ずっと専属でいたい。
(相手は、嘘偽りなく答えてくれたのだ。その誠実さにこちらも応えなければ、と思い切って顔を上げ。相手を真っ直ぐ見て、眉尻を下げ。)
変なこと言って、ごめんね…本当はその手紙、なんて書かれてるか見ちゃったの。
(酸素が薄くなったような錯覚に陥りながら、はく、はくと陸に打ち上げられた魚のように辛うじて息を吸い込んで、続く言葉を発し。)
…いい、縁談だった?
(縁談が持ちかけられたことを把握していると相手に分かってもらえるよう、言葉を選び。今後のエッセル家にとって、良い条件の縁談なのかと問いかけ。)
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