27836 2021-09-01 21:49:39 |
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(小瓶を少し傾けてみれば、なるほど、中の液体は香水よりとろりとした質感を持っていた。容器の華美さを見るに値の貼る品だろうに、それがなんと三つも。嬉しくないはずがなく、作っていた笑顔から少しずつ力が抜け、柔らかみを帯びていき。軽く目を閉じ、相手が開いた瓶からほんのりと漂う香りを吸い込み。ラベンダーの香りにはリラックス効果があると言われている。それを証明するように、先程孕んだ嫉妬心も徐々に薄れ…危ない。ハッと目を開きつつ、お土産を貰っただけで騙される安い女になってしまうところだった、と己を叱咤し。ラベンダーで落ち着けようとするとは、レイのくせになんとこしゃくな…!などと思いつつ、恐らく全くそういう意図は無かったであろう相手が香油の使い道を説明してくれているのを聞き。水仕事の多い自分を思って香油を選んでくれたのだと知り、舞い上がる気持ちと共に頬を紅潮させて。そっと相手に向けて呟いた「嬉しい」は心からのもので。それでも、嬉しさに弾んだ胸の奥底には仄暗い劣等感も潜んでいて。目を伏せ、自身の手を見つめ。見苦しくないようにしているつもりだが、それでも所詮は仕事で使い込まれた労働者の手。姿絵の女性の、陶器のように繊細で華奢なそれには単純な美では到底敵わないだろう。少し固い指の皮や、赤切れの微かな跡はアトラリアの日々の努力を表していて、自身の誇りでもあっるため、茶器よりも重いものを持ったことがなさそうな手より劣ってるとは思いたくない。それでも、好きな人の目には、誰よりも綺麗に映りたいと欲する心は止められなくて。卑屈な自分を振り払うように、ラベンダーの香油に顔を寄せる素振りで身を乗り出し、相手の膝に手を付いて互いの距離を縮め。)
ありがとう、すごい素敵なお土産…。
(幸せそうに細めていた目をゆっくり開き、顔を上げず、瞳だけを相手に向け。いわゆる上目遣いで、油断しているであろう相手に爆弾のような問いかけを落とし。)
手紙の、姿絵の女の人におすすめされた?
(言ってしまった瞬間、後悔をした。それでも、表面上は穏やかな笑みを浮かべ、相手の反応を待ち。)
(/長くなってしまいすみません…!そして寛大なお心に感謝します。ここからもっとぐいぐい行けるよう、気合を入れていきますね…!)
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