27836 2021-09-01 21:49:39 |
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(/旅先から持ち帰った手紙だろうか。偶然近くまで舞い落ちてきたそれを、相手は優美な所作で持ち上げ、中身を確認しはじめた。あまり喜ばしい内容が書かれていないのかもしれない、と思ったのは、読み進めていくうちに相手の面差しが少しずつ変化していく様に違和感を覚えたからで。ソファーに近寄りつつ、なんとも言い難い表情の相手が眺めている紙を、行儀が悪いと知りながらもチラリと覗き込み。目にしたのはやたらくるくるとした読み辛い文字たちで、貴族が書いたものだとすぐに理解し。育ちの悪いアトラリアにとっては筆跡も言い回しも難解な手紙で眉を潜めてしまったが、いつくかの単語が判別できれば自ずと内容が見えてくる。"両家の更なる発展"、"我が娘と"、"婚約"__主に縁談を持ちかけている書だ。よく見れば、封筒の中には小さな姿絵も挟まれていて。しなやかな美しさを持った、一目で高貴な身分だと分かる…ヒトの、女性だ。それを視認してしまった瞬間、胸の奥底が痛んだような気がして、キュッと唇を引き結び、何を耐え忍ぶように顔を俯かせ。焦りと不安、なにより醜い嫉妬が胸の中で渦巻いて、どうしてもそれらを飲み込むことができなくて。)
……なんの手紙?
(身を乗り出し、相手の耳に吐息がかかる程の至近距離で、試すような質問を投げかけてしまい。)
(/了解しました!ご期待に応えられるよう尽力いたします…!)
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