暗殺者ちゃん 2021-08-25 08:06:43 |
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そうか、俺も漏れなくその大勢の一人という訳か…。
(相手にとっては命乞いをしようがしまいが、命を刈り取る事に変わりはなく、それに気づけば相変わらずくつくつと自嘲して見せる。薄暗闇に溶け込むこの女の声色は、一切の感情を感じ取ることが出来ず、その声がより一層死を強くイメージさせる。最後に街の洋菓子店にある甘ったるいチョコレート、アリスの黒の綺麗な毛並み、唯一の理解者でいてくれた乳母の姿、走馬灯のように幸せを感じられた瞬間が頭の中を巡る。ほんの数秒の静寂の中で蘇る記憶に、両親の姿は無かった。
ベッドが沈む感覚に、思い出の世界から現実へと引き戻され、相手が横に黒い手を着き距離が近づけば、やっとその女の赤い瞳を捉える。掠れた声で発せられるその言葉とナイフのように微かな光に反射する瞳に、先程の冷淡な雰囲気とは違うものを感じる。それと同時に、こんなにもあっさりと終わってしまうなんてと、ぎりと奥歯を噛み締めて悔しさを露わにする。はりぼての威厳が崩れ落ちるのも時間の問題であっただろうが、相手に情けを掛けられれば、押さえこんでいた感情が噴出してくる。まだ死にたくない、この18年は一体何のために、誰かの為に死んでたまるかと。無様な命乞いなどしないという思いとは裏腹に、死への恐怖と悔しさに震えたような声で捲し立てて )
…今からでも間に合うのなら、お前が雇われたその倍の金額を払おう。それに金以外でも、お前が望む物はなんでも与える。だから…!
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