無名 2021-04-23 11:44:21 |
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>31 翡翠
(謙遜しつつも素直に明かされた名前。何処かで聞いた事があると思えば目線をやや下げ暫し思案する。記憶を呼び起こそうと心内で二度、三度とその名前を繰り返し唱えて。すると、とある人物が浮上してきた。いつだったか風の噂で耳にしたが、金を積まれればそれが人を斬る事であったとしても依頼を引き受け、竹杖で多様な戦い方をする凄腕の始末屋。通り名を竹杖の翡翠。自分はその姿を目にしたことは無く、周囲からの話でしか分からない。同じ派閥の中に実際にやられて負傷した者がおり、その者の話を人伝に聞いたが、瞬きする程の間にやられたので得物である竹杖しか印象に残っておらず、しかも夜分であった為に尚更その姿の全容は知れなかったと。また、民が井戸端会議でしている話の中には、ばっさりと斬られていたのだの、新手の辻斬りだのと噂が噂を呼び、てっきり刀だけでは無く竹杖も扱う珍しい浪人風情かと勝手な想像を抱いていたが、まさかこのような年端も行かぬ娘の如き姿容をしていたとは。しかし通り名が付く程のやり手である。軽侮してはならない。思い出した人物を目の前にしてぽつりと相手の通り名を呟けば改めて気を引き締め。)
………だったら?……誰かに依頼されてるの?
(彼女は名乗った後に、こちらの事を簡単に言い当ててしまった。武士では無いと言い切るあたり、恐らくは自分がこの佐幕派の者を斬る前から居たのではないかと。偶然この場を通りかかったとは考え難い。斬るべき標的は互いに同じで、相手もこの佐幕派の者を尾行するなりして狙っていたが先に自分が手を出し、その様子を窺っていて、その物音などから自分の正体に関して大方の予想をつけていたのではないか。もしくは、自分が誰かから狙われていて、その誰かが依頼者となり相手に自分を始末するよう依頼されているのではないか。何れにせよ隠しても仕方ない。もう分かっていることだ。少しの無言で相手の問いに対して肯定の意を見せれば真っ直ぐに相手を見つめ淡々と言い)
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