無名 2021-04-23 11:44:21 |
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>29 翡翠
(誰一人としてこの道を通る者は居ない。こんな夜更けに出歩くのは、用事がある武家や商人か、将又、妖怪の類くらいだろう。通行人が居ないのは寧ろ好都合だった。さて、誰かが来る前にさっさと立ち去らねば。歩き出そうとしたその瞬間自分の背にかけられたおなごの声。すぐに動作を止める。いつから居た。気配が無く、全然気が付かなかった。忍である為普通よりも気配には敏感な筈の自分が感じ取る事が出来なかったということは、普通では無い。そう思いながら声の主の方へと振り向けば、そこに居たのは童女。一瞬拍子抜けするも直ぐに気を引き締め。声色や雰囲気から察するに外見だけかと感じる。それに閉じられている目。盲か。夜目が効く為提灯が無くとも分かる相手の特徴。そんな彼女がこの場に居合わせている。何故だ。その前に何者だ。耳に届いた「同業じゃない」と言う言葉。忍では無い事は確かだが、武士や商人でも無い。旅人か。だとしても、目の前に血を流し命を絶って倒れている人がいるのにも関わらず、この落ち着き様。見えなくても、かなりの出血をしているのだから血の鉄の臭いが相手の鼻にも届いている筈。慌てる様子も無い。疑問は尽きず、いつも以上に警戒心を強め、いつでも抜刀出来るよう番傘をほんの少し右手に近付けては、そちらこそ誰だと問い)
……あなたの方こそ…誰?
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