どこかの兄弟 2021-04-20 18:36:39 |
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>37 ゴルド様
……どういう意味だ、それは。此処はそんなに危険な場所なのか?
(彼が口にした言葉の羅列、その中に然り気無く混じる不穏な単語にぴくりと肩が震え、更にじりじりと後退ってしまう。目の前の青年の言動といいこの場所の非現実的な雰囲気といい、少なくともこのチャペルが自身の信じている常識が通じないことだけは目に見えて明らかなのだ。この期に及んでは他にどのような憂いがあろうと何ら可笑しくはない。そして、青年の美しい唇が紡ぎ出したその名称は己が抱いた憶測を肯定するもので、「そんな馬鹿な。だってチャペルは、結婚式を挙げる場所じゃないか」俄かには信じ難い、それ故に自らの考えを否定するかのような発言をしてしまって。──と、その時。トン、と背中が瀬戸際に当たってフォルカーは退路を断たれたことを否応なく思い知らされることとなった。しまった。そう思った時にはもう遅い。より一層縮まった距離感は初めて出逢った人間にするものではなく、物理的にだけでなく精神的にも追い詰められてしまったフォルカーはおずおずと、しかし虚勢を張りながら「──僕も腰を据えて話をしたいと思っていたところだ。訊きたいことが山ほどある。全部答えてもらうからな」意識して震えを抑えた声でそう言った。彼の言うことが正しいのであれば、此処には何らかの危険が潜んでいるかもしれないのだ。ならば一刻も早く立ち去るべきだろう──これから行く先が安全である保証もまた存在しないのだが。)
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