匿名さん 2021-03-27 02:47:53 |
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私に見惚れる?どうせ見惚れるのなら、花壇に咲く花の方が良いと思うの────怖いくらいに綺麗よ。こんな具合にね
( 言いつつ、鞄から取り出したのはイキシアの花。朝日の当たる東屋で微睡みかけていた際に見つけた、赤が目に眩しい鉢植えだった。無口な庭師がその花を切り取って差し出したのは、貢物の類であったのだろうか?すぐに枯れてしまうだろうそれは身の置きように困っているようで、どうにも持て余していたけれど、見惚れる例として提示するには最適だろう。「 貴女にも似合いそうね 」椅子から立ち上がってかかとを上げる。正面から相手の頭を抱えるようにしてシニヨンに手を伸ばし、やんわりと髪に茎を絡めて花を飾り。ほとんど鼻が触れ合うような距離から穏やかな金と赤を見つめては、満足げに目を和らげて体勢を戻す。「 真っ赤な花がよく映えるハンサムなお嬢さん、貴女と仲良くなるのは願ってもないことだわ。……でも私、名前も分からない方と一緒に歩く趣味はないのよ? 」少々辛辣な言葉とは裏腹に、茶目っ気を孕んだウィンクと共に親交を結ぶ意を伝え。言外に含ませた名乗りの要求と共に、すっと背筋を伸ばした。思慕の視線を受けているならば、相応の振る舞いをしなければならない。少女にしては温和しく、青年にしては清潔がすぎる眼前の佳人にもそれは言えることだった。教室中の注目さえも振り切る程の憧れを、愉楽へと変えているらしい彼女は、春の陽気も重なってか大変きらきらしく見える。これを受容するのは大変そうね、なんてどこか他人事な感想を抱きつつ、胸の位置で両手を組んで返答を待ち )
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