さすらいの旅人さん 2021-02-27 21:41:52 |
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>14 / 京 隠先生
( そんなに遠くはない、という言葉に安堵する。それならばドレスで帰っても差し支えはないだろう。…少々目立ってしまうかもしれないが、今は月が空に浮かぶ夜。辺りが暗ければきっとあまり気にならないだろうし、出歩いている人間も少ない筈、何ならこんな時間に出歩いている人間は案外派手な格好をしているかもしれないし。隣を歩く彼もスーツ姿、自分だけが夜の街に浮いて見えてしまう、ということは無いだろう。暫く彼とやりとりを続けているうちに声を掛けてきたのは此の屋敷の使用人と思われる人間で、自らの服を手渡される。"ありがとうございます"、と軽く頭を下げながらそう紡いで、使用人の言葉に彼のことをちらり、と窺った。__家を飛び出してきてから、特に持ち物も無い、如何しても金に困ったら売れるものくらいは持っていても良いかもしれない。そんな考えでドレスを貰っても良いのか、と言われれば少しだけ迷ってしまう気持ちが無い訳ではないし、罪悪感が無い訳でもない。ただし折角の好意、無碍にする方が失礼に値するのではないだろうか。…それにきっと、もうこんな服を身に纏うような機会は無いだろうし。暫く、と言ってもほんの十数秒だが思案し、彼女は答えを出して。)
「折角なので持って帰ります、…あと、私はお姫様、なんて優雅なもんじゃないですから!」
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