匿名さん 2021-02-24 23:00:36 |
通報 |
(窓の外のぼんやりとした気配、風に擦れる葉音、階段を降りて来る彼の足音。最近、薄暗くなるにつれて、妙に五感が鋭くなって来ているのは気のせいだろうかと小首を傾げて。シャキシャキとキャベツを切る手は止めずともどこか浮かない顔で、そう別のことを考えていたのがいけなかったらしい。ふいに左指に鋭い痛みが走って「――いたっ、」反射的に包丁を置いて両手を握り締める。そっと開いた左手、その人差し指の先が赤い血で滲んでいるのを見ると、どうやら指先を包丁で切ってしまったらしいとじんじんと痛む部位を見て小さく吐息を零して。しかし幸いにも、傷口は浅そうで血液も徐々に滲み出て来る程度のもの。そして自分以外の者の足音が聞こえれば「あ、上月さん……?」とキッチンの入口からそっと顔を出し。自分の胸の前に左手を持ち上げ、部屋に戻ろうとする彼の姿を見つければバツが悪そうに肩を竦めて苦笑し)
ごめんなさい、少し指を切ってしまって。絆創膏をいただいてもいいですか……?
トピック検索 |