匿名さん 2021-02-24 23:00:36 |
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(翌日。スーパーの帰りに偶然会ったのは不眠に悩まされていた常連客。会釈しながら挨拶をすると、こちらに気付いた彼の顔は晴れやかで「ふふ」と微笑みを浮かべて。「何か良いことでもあったんですか?」「ああ、実は――」穏やかな表情のままコンビニでの出来事を語り始める彼の声はどこかおっとりとしていて、それは昨夜すれ違った時の雰囲気とよく似ていた。常連客が言うには、昨晩コンビニ店員の彼に話を聞いてもらったら、今までのことが嘘のようにぐっすりと眠れたらしい。「すごい。まるで魔法みたいですね」驚きを顕にして言うと常連客は深く頷いて「そうなんだ。本当に彼の言う通りに眠れて。もうこれで安心して寝れるよ」そうして和やかに会話を続けて別れを告げた後。しかし男性の背中を見送る茶色の瞳は戸惑いに揺れており " 不眠てそう簡単に解消出来るものかな " 、 " なぜ一日眠れただけで不眠が解消出来たと思えるのだろう " と疑念を抱いており。その戸惑いに比例して、薄暗い遊歩道の木陰にぼんやりとした何かが見えた気がして目を擦ると、その日はまっすぐに家へと着いたのだった。)
(そして約束の日。悩んだ結果、カツ丼も好きだと聞いていたのでとんかつなら嫌いな人も少ないだろうと考えて。しかし、少し疲れていそうだったためあまり脂っこくならないようヒレ肉を選んだり、タレは醤油と味醂ベースの和風味にしたりと工夫しつつ。エプロンを着け、とんかつとタレ、お味噌汁を作り終えれば後はキャベツの千切りをザクザクと刻みながら考えていたのは一昨日のこと。自分が言った " 優しい味 " という言葉について尋ねられていたのだが、それは " 作り置きしてくれたことの配慮が嬉しくて温かくなった " という意味も、彼の印象を話していたような感じにもなっていて結局しどろもどろとして昨夜は満足な返事が出来ず。「しっかりしなきゃ……」と、最近戸惑うことが多いために自分に言い聞かせ。そのまま小さくハミングしながらキャベツを細かく刻んでいき。)
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