傍観者 2021-02-22 23:29:30 |
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......そう、か。そうだな、気を付けるとしよう。俺と出会った時の事......そんな考えるような事があったか?野垂れ死にしかけていただけだっただろう。
(野暮な問いかけだっただろうかと心配したが、彼はあっさりと教えてくれた。"妻の事"と聞けば喉の奥が引き攣るような思いを飲み込みなんとか言葉を続け、歩き出した彼の歩幅に合わせて隣を歩き。彼は気を付けた方が良いと親切で忠告してくれたが、真っ先に命に危険が迫るのは彼の方ではないだろうか。自身は鬼であり体格も周りより十分あるが、彼は腕も細く体も自分にとってはすっぽり収まってしまうほどに小柄に見える。むしろ鬼でなくても盗賊なんかと出くわしても危うそうだが、流石に怒られそうで口にはしなかった。提灯が照らす道を進んでいる間、隣にいる彼の顔を見るとその赤が白い肌を浸食して照らす。その横を幾度も人が通り過ぎたり追い越したりするなかで、人の顔をした鬼を見抜くのは同族でも容易ではないが、不意にどこかから香るほんの僅かな異質な匂いに、その黄金色の双眸は時折きつい視線を配っては警戒して)
――しかし、見かけないとはいえ、鬼は人に紛れているのだから気づかないだけで案外近くにいるだろうな。
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