傍観者 2021-02-22 23:29:30 |
通報 |
(一人になって広く感じる居間を背に縁側で徐々に青さを失う空を見上げていた。彼に命を拾われ共に過ごすようになってから、この部屋が広いと感じるようになった気がする。そう思って今の方へ顔を向けると、誰かと過ごす事など二度とないまま死ぬつもりだった自身が、彼の姿を探しているようで可笑しな気持ちだ。しかしそれを感じてからはジッと待つ事もできなくなり、買い物に出たきり帰ってこない家主を探しに家を出る事にした。赤々とした日暮れの色に染まる街中で彼の立ち寄る場所や行き先などは詳しく知りもしなかったが、カロンカロンと軽やかな下駄の音が幾重にも集まる通りに入ると自然と足は見知った場所へと向かう。するとまだ距離はあるもののあの煙草屋の軒下に、見覚えのある姿を見つけた。膨れた紙袋を抱えたままボーっと人通りを眺めどこか放心状態のようで、そのまま近づいても気づく様子もない。黙って横に並んで立つと悩ましい呟きが聞こえてきて、思わず顔を覗き込むように体を屈め)
……俺は九条が帰ってこない事にどうしたらいいか悩んでいたんだが、このまま日が暮れるのを見ているつもりなのか?
トピック検索 |