名無しさん 2021-01-12 19:16:08 |
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相手の指が示す先にそろりと視線を遣り、至って簡易に済まされた説明に曖昧に頷いて返す。好きな場所にいていいという相手の気遣いには、一生ここに座っているつもりなのか微動だにしない。
男性が隣を通り過ぎると、菫の目に映るのは無機質なドアだけだった。背後からの物音は気に留めず、先ほどまで男性が立っていた方向をぼんやりと見つめる。夜中に向こうの家を出てからここに来るまでの間一睡もできておらず、睡眠不足と疲労から意識に霞がかかっていくのが分かった。疲れた、このまま寝落ちてしまいたい。そうして上げていた顔が再び俯きかけたとき、後方から聞こえた男性の声で無理矢理意識が引き上げられた。
「…………」
半分だけ男性を振り返り、“それ”に一度視線をやって小さく頷く。服と歯ブラシと絵本とはさみ。それが唯一菫に残されたもの。背負っていても随分と軽い。以前はもっと沢山──ぬいぐるみとか、おもちゃの指輪とか──あったはずだが、いつの間にか無くなっていた。
(/間取りについて承知いたしました!ベランダはないままでお願いいたします。ご丁寧な説明、ありがとうございました。そしてレスペース(無言期間)についてお願いがあるのですが、十日までだったものを三週間までにして頂くことは可能でしょうか?中々リアルとの兼ね合いが難しく、毎度アナウンスするのも失礼だと感じていまして……。最初にお伝えした期限を守ることができず申し訳ありません。)
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